東京高等裁判所 平成9年(行コ)77号 判決 1997年12月24日
神奈川県横須賀市馬堀海岸一丁目六番地八
控訴人
鈴木貞子
右訴訟代理人弁護士
影山秀人
同
栗山博史
神奈川県横須賀市上町三丁目一番地
被控訴人
横須賀税務署長 佐藤公彦
右指定代理人
伊東顕
同
青木明
同
庄子衛
同
森重良二
主文
一 原判決を取り消す。
二 控訴人の本件訴えを却下する。
二 控訴費用は、第一、二審を通じ控訴人の負担とする。
事実及び理由
第一当事者の求めた裁判
一 控訴人
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人が、平成五年一二月二七日付で控訴人に対してなした、平成三年分所得税の更正処分についての分離短期譲渡所得に対応する部分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。
3 訴訟費用は第一、二審を通じ被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
1 主位的請求
主文と同旨
2 予備的請求
(一) 本件控訴を棄却する。
(二) 控訴費用は控訴人の負担とする。
第二事案の概要
事案の概要は、原判決四頁七行目の「平成五年一二月七日」を「平成五年一二月二七日」に改めるほかは、原判決の事実及び理由欄「第二の事案の概要」に記載のとおりであるから、これを引用する。
第三証拠関係
証拠関係は、本件記録中の書証目録及び証人等目録に記載のとおりであるから、これを引用する。
第四当裁判所の判断
一 争点1に係る事実関係は、次のとおり付加、訂正するほかは、原判決事実及び理由欄「第二 事実の概要」一及び「第三 当裁判所の判断」一1に記載のとおりであるから、これを引用する。
1 二五頁九行目の「昭和五九年一二月二二日」を「昭和五九年ころ」に改める。
2 二六頁九行目の「同月一九日」を「同月二六日付で」に改める。
二 右事実によれば、本件通知書は、控訴人の住民登録上の住所地で、かつ、本件処分の対象の平成三年分確定申告書にも住所地として記載され、控訴人自身が被控訴人の係官の問い合わせに対し同所への送付を容認していた浦賀町に郵便により送達されたものであるから、右送達の日の翌日である平成五年一二月二九日に控訴人は本件処分に係る通知を受けたものというべく、平成六年三月三一日にした本件異議申立てが不服申立期間経過後の不適法な申立てであることは明らかである。
控訴人は、右送達当時浦賀町に居住していなかったから、同所は住所又は居所に当たらない旨主張するが、右に述べたことに加え、前認定のとおり、控訴人は昭和六二年分から平成四年分の所得税の確定申告書に添付した勤務先発行の各年分の支払調書にも、住所地を浦賀町と記載していたことを考え併せれば、納税上の控訴人の住所又は居所は浦賀町であると認めるのが相当であって、控訴人の主張は採用できない。
また、控訴人は、本件通知書を受領したきみには受領権限を授与していないから、きみが受領しても通知を受けたことにはならないと主張する。
しかし、郵便により送達された書類を送達場所に居住する受送達者以外の者が異議なく受領した場合は、その者が事理を弁識し得ない者であるときを除き、その者の受領の時に送達は完了し、受送達者は通知を受けたこととなるものと解すべきである。とりわけ、本件の場合は、前認定のとおり、控訴人は本件通知を浦賀町にすることを容認しており、同所にはきみが居住しているのであるから、きみが本件通知を受領することを容認していたものと認めるほかなく、控訴人の右主張も採用できない。
第五結論
よって、控訴人の本件訴えを適法と解した原判決は失当であるから、原判決を取り消して、控訴人の本件訴えを却下することとし、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九六条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 町田顯 裁判官 末永進 裁判官 藤山雅行)